赤ちゃんたちの様子
脳の再編
「パラリンピック・ブレイン」(初版2021)の著者、中澤公孝さんは、パラリンピック選手の脳を研究されている方です。
彼の本には「脳の再編」という言葉が出てきます。
彼は、パラリンピック選手の脳の研究を重ねていくうちに、パラリンピック選手の脳が、健常者の代表であるオリンピック選手と比べ、驚くほど変化していることが分かったそうです。
様々な障がいをもつパラリンピック選手の中に、脳性麻痺の水泳選手の記事もありました。
水中でのトレーニングの有効性がデータと共に載っていました。
昨年から、大和鍼灸院に通うpvlやダウン症の子どもたちに、鍼やストレッチに加え、お風呂やプールでのトレーニングをお勧めしています。
これが、想像以上に効果があり、驚いていたところでした。
それだけに、子どもたちが見せてくれた、嬉しい成長の理由が解り、深く共感したのを覚えています。
乳幼児期だからこそ
多くの可能性があり、どの子も大きな可能性を持って生まれてきます。
脳科学の視点では、一生のうちで、子どもとよべる脳は12歳までだそうです。
その後は、反抗期や思春期、第二次性徴が到来し、大人脳への移行期間です。
それと同じように骨・関節・筋の成長も、生まれてから、幼児期、幼児期から学童期にさしかかるまでの成長の段階があります。
その変化を子どもたちの身体に触れ、いつも感じています。
全てが同じタイミングで成長するわけでなく、身体の部位ごとに、旬の成長期があります。
スキャモンの発達曲線をご存じでしょうか。
生まれてから二十歳になるまでの発達のパターンを器官ごとに表したグラフです。
この表にもあるように、神経系の発達は12歳頃までがピークです。
なかでも乳幼児期の発達はめざましく、8歳頃が臨界期だそうです。
pvlの子どもたちも例外でなく、むしろこの時期の身体作りが、子どもたちの将来にとって、とても重要だと感じています。
神経系とは、運動を調節するものです。
動作の基礎を覚え、より複雑な動作を覚えるのに、絶好の時期なので、この時期にできるだけ自分の身体に対する意識を高めいていくことが大切です。
子どもの時に身につけた運動の技術が、大人になってもできるのは、子どもの時に何度も繰り返し練習したからです。
これと同じように、pvlの子どもたちも、この時期にできるだけ麻痺の影響を減らし、様々な身体の動かし方をこちらが促していき、動きのバリエーションを体験させることが重要になってきます。
スタッフが心がけていること
子どもたちの発達を促すため、よりよい歩行を覚えるため、今、何が必要か、考えながら治療内容を組み立てています。
少し頑張れば、手が届きそうなところに目標を立て、子どもたちが無理なく、楽しみながら続けていけるよう心がけています。
経過を見ていると、一人一人が持つ、身体の特徴がはっきりしてきます。
子どもたちの興味に合わせ、大きな負担のない動作であれば、どんどん促していきます。
身体を動かすことの恐怖心を減らし、楽しさが分かってくると、新しい動作を覚える大きなきっかけになります。
様々な角度から、子どもたちにとって治療効果が期待できるものを取り入れ、日々検討しています。
また、子どもたちの普段の様子、遊び、歩行、走っている姿など、動画撮影していただき、治療の参考にさせて頂いています。
ご家庭でできるマッサージ・ストレッチ・トレーニングのメニューなどをお伝えしていただき、ご家庭との連携を心がけています。
子どもたち一人一人の課題や目標、できるようになったことなど、スタッフ皆で考えながら、日々、子どもたちに向き合っています。
できるようになる喜び
これまで、自分からすることのなかった、筋・関節の動かし方を、繰り返し教えていくことで、子どもたちは身体に対する意識が高まり、次は自分でやってみたいと思います。
やがて、苦手だと思っていた動作ができるようになると、自信に満ちた表情を見せてくれます。そんな子どもたちの顔を見るたびに、この子は動きたかったのだなと思います。
障がいの程度に関係なく、子どもたちは身体を動かすことが大好きです。
子どもたちに身体を動かすことの楽しさを少しでも味わってほしい、そう願っています。
姿勢異常が防げると思った出来事
外反扁平足もpvlの子がなりやすい姿勢異常の原因のひとつですが、お誕生日ごとに足形を取っていた子が、4歳のお誕生日にはしっかり土踏まずができていたという嬉しいご報告を受けました。私も正直、驚きました。
正しい身体の使い方ができてきたという証です。
成長と共に身体が硬くなり、姿勢異常も目立ち、外反扁平足が強くなってもおかしくないのですが、反対に外反扁平足が治っていく事実を目の当たりにし、喜びと興奮を覚えました。