Mくん / 脳室周囲白質軟化症(PVL)の治療ならさいたま市の大和鍼灸院へ

Mくん
Mくん 現在2歳2か月
初診:0歳4か月
出生:33週 1490g
診断名:PVL(生後2か月のMRIにて)
病院からは、足に影響が出るかもしれないと診断されました。
親御さん:反り返りが強いことを気にされていました。

 

2021年 初診スタート

初診の記録:月齢4か月

初診時が4か月だったので、沢山の所見はありませんでしたが、一番強く表れていたのは反り返りでした。 手の握り方はごく自然。仰向けにして両手を合わせようとするととても嫌がりました。 おそらく背中に硬さがあるから本人はやりたがらないのだと思いました。 うつ伏せにするとやはり背中の緊張が強い為、反り気味になり、腰のあたりを指圧すると、特に嫌がりました。又、仰向けにして両脚をもって背中を丸めさせる姿勢を取らせようとしましたが、反り返りが強いので本人の抵抗が強く当時はできませんでした。

股関節は開きにくく、やはり、背中の緊張に加え、内転筋などの緊張が出ていることがわかりました。足関節・足底に関しては可動域までの動きに抵抗はあるものの、大きな癖もなく、多少、前脛骨筋に硬さがある印象でした。

→反り返りを取ることを目標に治療を始めました。


春の記録:月齢4か月~6か月頃

▪目標:反り返りを取ること

治療開始しましたが、反り返りは段々強くなってきました。1か月経過したあたりから、背中の緊張は徐々に取れてきました。

2か月経過したころには、仰向け・うつ伏せ共にリラックスした状態を保つことができるようになりました。横向きのまま、リラックスして姿勢を維持することもできるようになり、寝返りの練習ができる準備ができました。


夏の記録:月齢7~9か月頃

目標:寝返り

興味関心が急成長して、アイコンタクトなど意思の疎通ができる場面が多々見られるようになりました。寝返りを目標とした治療スタートでしたので、親御さんには集中治療をお勧めし、7月頃実施し、8月には寝返りができるようになりました。

この頃になると、反り返りがほぼなくなり、同時進行でズリバイ・ハイハイの初歩的な練習も取り入れました。又、立つために必要な足底をより正しくつく練習や、体幹を意識させる練習も取り入れました。

夏が終わるころには、四つ這いの姿勢をキープできるようになりました。


秋の記録:月齢10か月~1歳頃

目標:ズリバイとハイハイ、又、片側しかやらない寝返りを両側できるように促していくこと。

この頃になると、すっかり背中の硬さはとれ、お母さんがお座りをさせると、1人で座れるようになりました。前傾姿勢ではありますが、両手を大きくパーにして上手にバランスをとっています。

ズリバイの兆候も出てきました。うつ伏せで両脚を交互に動かしています。両脚は床を捉え、両腕も推進力につながりそうな正しい動かし方ができています。補助ありの四つ這い姿勢が安定してきました。体を動かすことにとても積極的になりました。


冬の記録:1歳~1歳3か月頃

目標:ズリバイ・ハイハイ。両側寝返り。又、新たに出現した硬さを取っていくこと。

この頃になると、よく体も動かせるようになり、動きのバリュエーションも増えてきました。よく動くことはとてもいいことなのですが、今まで見えてこなかった硬さが出てきます。理由は、筋力がつくからです。筋力がつくと、一時的に筋肉は硬くなる性質を持っています。PVLの子だけの特徴ではなく一般的に筋肉が持つ性質です。

積極的に体を動かすにつれ、喃語のバリュエーションも増え、興味・関心も増えてきました。治療中、泣きながらも、そばにあるおもちゃに手を伸ばすようになりました。

運動面でも、ズリバイがゆっくりできるようになりました。四つ這いの姿勢が一人でとれるようになりました。又、立たせると、一人でつかまり立ちをするようになりました。尖足はなく、よい姿勢です。まだ体幹は安定していない為、伝い歩きをするまでには時間が必要です。立たせて親御さんが脇を抱えると足を交互に出す動きも見せてくれます。

まだ完全にかかとをついての歩行ではありませんが、ゆっくり歩行をさせてあげると、比較的かかとは下りやすい状態です。

ここで注意することは、歩行をすることは本人にとって、とても楽しいことですが、かかとが浮いた歩行は長くやらせない方がいいということです。より正しい歩行を身につけてもらう為には、短い距離でも正しい歩行をさせることが大切です。


2回目の春の記録:1歳3か月~

治療を始めて1年が経過しました。

今できることは、ズリバイ・お座り・四つ這い姿勢・つかまり立ちです。

つかまり立ちは、立たせてあげると自分で立っていられるという状態です。

初診から現在までの経過は、こちらで予想していたよりも順調だったように思います。

1歳前に集中治療ができたことも、大きく成長を促すことにつながったと思います。

集中治療前の通常の治療でも強い反り返りはだんだん消えていき、生後6か月頃から、運動面での成長が急速に見えてきました。又、同時に情緒面での成長も加速し始めました。

現在1歳半になりますが、来月2回目の集中治療を行う予定です。1回目の集中治療では、お座りやズリバイが促されました。2回目の集中治療ではハイハイと自分からつかまり立ちをすることを目標として行う予定です。

どの子にも言えることですが、体を動かすことと、知的能力・情緒面の発達は相関しているといつも感じます。

PVLの子の運動面での発育について、ハイハイの前につかまり立ちをするなど、順番は前後することが多くあります。そこにはこだわらず、やれることからやることがとても大切です。本人の意欲を最優先してあげましょう。もちろん、ハイハイは立位・歩行の時に大切な筋力バランスを獲得するためにかかせない動きです。ハイハイをあまりしなかったり、期間が短いこともよくありますが、後からハイハイをさせれば、体はしっかり鍛えられます。

補足

集中治療について

お子様の年齢・麻痺の強さにより、親御さんにご提案いたします。比較的年齢が低いお子様にはボリュームの少ないプランからご案内いたします。


1歳4か月~1歳6か月までの記録

●2回目の集中治療を実施しました(1歳4か月)

目標:交互性のあるハイハイ、自分からつかまり立ちをすること。

この頃のM君はわりと自由にズリバイをやっています。足も交互に動いています。
ズリバイの途中で時々、お尻を高く上げる動作が見えてきました。これは四つ這い姿勢になる兆しです。ご家族のご要望もあり、集中治療をするよいタイミングでもあったので、ボリュームを落とした集中治療をご案内しました。予定より2か月前倒しで実施しました。

【集中治療中のM君の様子】
集中治療2週目と1日目で四つ這い姿勢が維持できるようになりました。
この頃のM君は、体が動かしやすくなり筋力がついてきた時期でもあったので、色々な動作ができるようになっていました。
一方で、筋力がついてくると筋肉が硬くなり正しい関節の動かし方ができにくくなるという特徴もある時期です。これをいかに乗り切るかが一番の治療のポイントでもあります。これはどの子にも言えることです。

またM君はpvlの特徴でもある外反扁平足の兆候も目立ってきた時期でもあったので、目標にしていたハイハイや、つかまり立ちの前に、しっかり筋肉をほぐし、正しい関節の動かし方も覚えてもらうことを同時にやりました。

外反扁平足になる理由はいくつかありますが、M君の場合腸腰筋、内転筋などの麻痺による硬さが大きな原因と思われるので、その辺りから治療にあたりました。

集中治療3週目の最終日に、ようやく大きな外反扁平足の兆候が和らぎ、泣いて力んでいてもわりと足首の正しいアライメントを保てるようになりました。

※外反扁平足を防ぐマッサージやストレッチは、おうちでもできることなので親御さんにやり方をお伝えしています。治療では鍼以外にも、マッサージ、ストレッチ、トレーニングが欠かせません。

集中治療ではハイハイができるため集中の四つ這い姿勢を保つことができるようになりました。これからが本格的にハイハイの練習の始まりです。また、肘・手首・肩がとても柔らかくなりました。これも四つ這い姿勢で両腕が体幹を支えやすくなった要因だと思います。

自分からつかまり立ちをするという目標は、もう少し先の目標になりそうですが、必ずそこにつながっていくはず。集中治療後の経過をしっかり見ていきたいと思います。

つかまり立ちの兆候としては、ハイハイをするようになり(ズリバイでもいいです)、低い台に手を伸ばし始めた時が絶好の練習開のタイミングです。つまり片手を床から離せるということでもあります。この時を待ちたいと思います。


1歳7か月~2歳1か月までの記録

集中治療が終わり、ハイハイの兆候が強くなってきました。
大和ではハイハイができそうなタイミングを見計らって、積極的にハイハイを促す練習をしています。
pvlの子は、ハイハイに交互性が見られない子が多いです。ピョンピョンうさぎか跳ねるように両膝で跳ねるようなハイハイになりがちです。交互に足が動かせる練習をしていきます。
M君は集中治療後も、なかなかハイハイの一歩が出ませんでした。 柔軟性はあるし、硬さがあったとしてもハイハイを妨げるような硬さではないし、どうしてなかなか進まないのかとしばらく考えましたが理由はM君の体重にあることが分かりました。ぽっちゃりしている体格で、筋力と体重が釣り合っていなかったのだと今では分かります。
1歳9か月頃には、交互性のあるハイハイを見せてくれました。
集中治療が終わり、四つ這い姿勢が安定した5か月後でした。

M君のように反り返りが強い子は、背中や肩の緊張が強いため四つ這い姿勢になること自体が難しいことです。四つ這い姿勢を取らせようとしても、なかなか両腕を床につこうとしません。また、膝を曲げてその姿勢を保つのも難しいです。ズリバイでも足が棒のように伸びきったまま進んだり、どちらかの手だけを使って進む子もいます。そのため体の使い方に左右差が生じてきます。
これが成長期のpvlの子どもたちの発達を遅らせ、姿勢異常の原因になると考えています。

M君も強い反り返りがありましたが、今元気にハイハイをしている姿を見ると、次の目標でもある自分からつかまり立ちをすること、そしてやがて歩行の練習をする姿が目に浮かびます。
2歳のお誕生日を迎え、現在2歳1か月。これから治療の見直しが必要ですが、M君の治療の経過を軸に無理なく計画を立てていきたいと思います。ここまでのご家族のご協力に心より感謝いたします。

2022年12月28日


2歳2か月~2歳5か月までの記録

自力でつかまり立ちができるようになりました。
テレビ台につかまり、よく立つ姿を目撃するとのことです。予想していたよりも早くできるようになってくれました。

今、親御さんが心配されていることは、立った時、膝がロックされるような立ち方になることです。そこを次の課題としてメニューを組み立てていくことにします。

しかし良かった点は、自力でつかまり立ちが比較的早くできたことです。
そして、立った時の膝が曲がらずに伸ばせていたことです。

特に痙性の強い子は、膝が内側に曲がりがちになり、伸びきらないことが多いからです。
それが尖足につながります。

Mくんの場合、生後3か月からと治療開始が早かったことと、定期的に通院され、年齢ごとの集中治療を実施できたことが大きな理由だと考えています。

体幹を柔らかくするストレッチやトレーニングを取り入れました。
立った時の膝の柔軟性(屈伸運動ができるように)をつけるためです。

また、つかまり立ちをやるようになってから、足首に硬さが目立ち始め、外反扁平足の心配も出てきました。膝の柔軟な使い方の前に体幹や大腿の筋緊張を緩めることを目標としました。
色々なことができるようになると、じっとしていた時よりも筋緊張は高まります。しかし、ここでしっかり対策ができれば、大丈夫です。
どんどん身体を動かして、筋力をつけながら、しっかり筋をほぐしていきましょう。
装具もでき、使い始めています。

3回目の集中治療です。 目標は外反扁平足を防ぐこと。きれいな立ち方で膝を柔らかく使えるようにすることです。
初診時は強い反り返りがあったものの、これまで集中的に体幹を柔らかくすることで、今はすっかり柔らかくなりました。
これからの治療内容は、大腿部や足関節を柔らかくすることで、つたえ歩きから歩行が視野に入ってきました。

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