PVL/脳室周囲白質軟化症 治療前・治療後の最新動画 レポート17
レポート1~4までは、PVL(脳室周囲白質軟化症)当院の指標、PVL/大和スケール・グレード3を軸に公開致しました。グレード3は様々な緊張はあるものの、「独歩が出来る」お子さんのグループになります。緊張、運動障害の出方がはっきりしており、また軽度グループなので、治療効果の変化が大きく出やすく、分かり易いグループになります。参考までに下記に、グレード1~3、グレード4~6、グレード7、8、グレード9、10を掲載します。
- グレード1~3 軽度であり、かかとが浮いてしまう、足先が内転するなど、様々な緊張や硬さといった麻痺はあるものの、自身での立位、独歩が出来る。
- グレード4~6 やや重い運動障害や若干の知的障害を伴う場合がある。自身での立位不可、独歩不可。全身各所の筋の過緊張が強く出ており、足がクロスする。
- グレード7、8 出生時体重500g以下で予後不良、または新生児仮死などの合併症をわずかながら伴うグループ。かなり重い運動障害や知的障害がある。自身での立位不可、独歩不可。グレード4~6よりも一段と全身の過緊張が強く出る。
- グレード9、10 最重度の運動障害、知的障害がある。3才になっても寝返り不可、移動不可、視力0で、治療効果が大変出にくいタイプ。
レポート17
D.M君(東京在住) 再診:令和5年9月9日(2才0ヶ月)/初診令和4年3月6日
成長の記録
4週1458gで出生。脳のMRI検査でPVLと診断。
紹介された市の療育センターで1歳半までリハビリ通院していたが、目立った麻痺が見受けられずリハビリ終了。
2歳になって、早歩きや友達を追いかける際に両踵が浮いていると保育園から報告あり、家でも興奮時に両踵が完全にあがってつま先で歩くのを見るように。緊張が急激で強く、リハビリの再開に加えて、装具療法、麻痺を起こしている背中の神経を切る手術も検討した方がいいと言われ、
リハビリ時に何度か通っていた大和さんに望みにすがる思いで再通院。
以前の治療時に、たった1回でも体が驚くほどに柔らかくなった事をよく覚えていて、効果を体感していたため、すぐに集中治療をお願いしました。
全ての質問に丁寧に答えてくださり、息子の体に何が起こっていて、どういう治療をするから、麻痺が取れていくんだという筋が通った説明をいただけるのも大きかったです。
また、家で出来るストレッチも真摯にレクチャーいただきました。
集中治療を始めて1週間で、踵が上がるのを家では見なくなり、保育園でもつま先立ちの角度が緩やかになったと聞いています。週に1回の半日通院(*後に週に2回の半日治療に変更)で、家でも教えていただいたストレッチを毎日していますが、徐々に足首が柔らかくなっていくのを感じ、着実に良くなっているのが分かります。
大和さんに出会えて、手術なしで麻痺が取れる日が来ると信じられます。本当にありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。
PVL/脳室周囲白質軟化症動画1 令和5年(2023年)10月26日公開
院長コメント
新レポート17,D.M君(2才)が公開されました。PVL、脳性麻痺全般だけでなく、昨年7月より「自閉症」に対する画期的な治療法が確立したため、国内・海外へのご案内及び治療を重点的に行っておりました。しばらく「PVL最新の治療動画」がお休み状態でしたが、今後は定期的に順次公開するよう計画しております。 新しいレポートは、初診後経過が良好だったため、しばらく当院の受診をお休みされていましたが、約8ヶ月ぶりの再診となります。再診受診後すぐに治療効果が現れ、これから本格的な治療を行っていきます。どの様に回復変化をしていくのか、是非ご一緒にご覧下さい。最新の治療動画公開にご協力下さいましたお父さん、お母さんへ感謝申し上げます。
今年の9月に再診でご受診されたD.M君の動画になります。2才0ヶ月で再受診されたとき、徐々に体内で起こっている「緊張」が強まり、「かかとが浮く」症状が出てきました。PVLと診断され、出生後目立った硬さが出ていない軽度の場合でも、少しずつ「緊張」が蓄積していき「かかとが浮く」症状は、必ず出ると言って良いほど、高い確率で出現します。
*お母さんのコメントで「集中治療を始めて1週間で、踵が上がるのを家では見なくなる」とありますが、この場合、踵が浮き始めて間が無いときはすぐに「かかとが着く」ことも多く、すぐには着かない場合もあります。
さて動画を見てみましょう。歩き始めはゆっくりとした足取りですが、右足のかかとが浮いており、左足も若干浮いています。途中速度が弱まり、すぐに早い足取りになってから右足のかかとは更に上がっていて、左足のかかともわずかに浮いてきています。この動画は10月に入ってから保育園で撮影されたものです。当院の再受診で治療を受ける直前までは、両方のかかとが完全に浮き、「つま先だけ」で歩いていたとのことです。9月からの治療直後から、かかとの浮きは小さくなり、動画の様子となっています。当院での再受診前まではご自宅でも、「かかとが浮く」ことが時々見られましたが、治療再開後は今のところご自宅では「かかとが浮く」ことは無くなったようです。
「かかとが浮く」お子さんの親御さん方はご存じのように、一旦かかとが浮き始めると「かかとの浮きは強まっていく」ことは広く知られています。当院の治療は今後、どのように作用して「かかとの浮きが消失」していくのか、是非ご一緒に、ご覧になってみて下さい。
注:拇指(手)の麻痺について
拇指の麻痺について触れておきましょう。通常拇指の麻痺については、どの親御さんも病院の医師に指摘されることは殆どないでしょう。ですが当院では全身の麻痺、殊に拇指の麻痺についても重要視しております。当院を受診される親御さんにはご説明させて頂いておりますが、拇指の麻痺を放っておくとお子さんの私生活にも影響するだけでなく、「かかとを着けて歩く」ことについても悪影響を及ぼします。体内の過緊張は、興奮したり緊張が強まったとき、手だけが緊張して足は緊張しなかったり、かかとだけが緊張して浮くとき、体幹や手の拇指は緊張しないということはありません。例えば道路の交差点で急にトラックが目の前に来た時、皆さんは「全身が硬直」することはお分かり頂けることでしょう。また、アームレスリングなどでは両選手がテーブルの上に手を組み、「腕力だけ」の勝負をします。指相撲をするときは手や指に力を入れて勝負をします。ですが気が付くと、全身に力を込めていることに気が付かれることでしょう。
それはPVL児の場合でも同様に、「どこかが緊張すると全身が反応する」ことを意味します。例え足の過緊張だけを取り除こうとしても体幹や手の指に緊張が残っていたら、足の緊張が取れ始めても「体幹」や「拇指」の緊張によって、せっかく緩んできたかかとの緊張も、連動して反応してしまうため、緊張が復活していきます。最も目立つ緊張する部位は「かかと」や「股関節」ですが、これら麻痺を起こしている部位の緊張を取り除く場合、手の指といった見逃されやすい部位の緊張も、見逃してはなりません。また手の指は、物をつかむときや絵をかくときに重要な役割を果たします。小学校や中学校へ行くといよいよ勉強が待っています。先生の話をメモに残したり、試験のため指を酷使します。毎日の生活の中で手の指は、年々重要になり生涯にわたって影響してきます。よって当院では、最も目立つ足だけでなく、全身の緊張を起こしている部位を全て見逃さず、同時に過緊張を取り除く治療を行っていきます。手や指の緊張は決して見逃してはいけません。