PVL/脳室周囲白質軟化症 治療前・治療後の最新動画 レポート12
レポート1~4までは、PVL(脳室周囲白質軟化症)当院の指標、PVL/大和スケール・グレード3を軸に公開致しました。グレード3は様々な緊張はあるものの、「独歩が出来る」お子さんのグループになります。緊張、運動障害の出方がはっきりしており、また軽度グループなので、治療効果の変化が大きく出やすく、分かり易いグループになります。参考までに下記に、グレード1~3、グレード4~6、グレード7、8、グレード9、10を掲載します。
- グレード1~3 軽度であり、かかとが浮いてしまう、足先が内転するなど、様々な緊張や硬さといった麻痺はあるものの、自身での立位、独歩が出来る。
- グレード4~6 やや重い運動障害や若干の知的障害を伴う場合がある。自身での立位不可、独歩不可。全身各所の筋の過緊張が強く出ており、足がクロスする。
- グレード7、8 出生時体重500g以下で予後不良、または新生児仮死などの合併症をわずかながら伴うグループ。かなり重い運動障害や知的障害がある。自身での立位不可、独歩不可。グレード4~6よりも一段と全身の過緊張が強く出る。
- グレード9、10 最重度の運動障害、知的障害がある。3才になっても寝返り不可、移動不可、視力0で、治療効果が大変出にくいタイプ。
独歩が出来るタイプのお子さん方は、治療期間が最も早く終了するタイプですので、
独歩が出来るお子さんがいらっしゃる方は、早期に治療を行った方が良いでしょう。レポート4までは、分かり易い変化をする、独歩が出来る軽度グループを先行して公開致しました。さて、準備が整ってきましたのでこれより、やや重いグループ、グレード4~6をしばらく公開致します。今しばらくお待ち下さい。
レポート12
S.S君 初診:令和2年5月27日 8才1ヶ月 3週間特別治療
医師から言われた言葉
当時の担当小児科医に相談したところ、脳室周囲白質軟化症の疑いを指摘される。また胎児期に胎内酸欠の理由が多く、双生児に表れ易い症状ということを知る。同時に治らない症状という事を知り、様子を見ながら症状と向き合う生活が長く続くことを理解した。
成長の記録
37週 2,368gで出生、合併症無し。不妊治療(タイミング方を半年間)の為、多卵子を維持したまま二卵性双生児の兄(母体内 下部側)として出生を迎える。弟に目立った特異な症状無し。
当人 首すわり、声掛けへの反応、寝返り、おすわり、はいはいの開始時期に問題なし。
生後10か月頃に つかまり立ちをするものの(正常期)、それ直後の座り方に違和感(床に尻を付かず、先に手を床に付いてから座る=しゃがめない)を覚え、
『治らない』という言葉が擦り込まれたまま小学二年生になった彼は、踵が床から4cm程浮いた状態のつま先立ちで歩き、転ばずにバランスを採る為 両手をヤジロベエ化と駆使し、ペンギンの様に上体が左右に揺れて歩行していた。家族はその歩行を最善と捉え、見慣れたふりをするしかなかった。周囲からの偏見の対処を探りながら、不恰好でも生き続けてほしいと願っていた。
PVL/脳室周囲白質軟化症動画1 令和3年(2021年)6月5日公開
お母様からのコメント
コロナ禍による長期休校とその暇を埋める為、逃げていた“PVL”を数年ぶりにインターネット検索してみた。大和鍼灸院が直ぐ目に留まり、院があるさいたま市を身近に感じ(我、茨城県つくば市)即入電をした。閉所恐怖症の為に西洋医学(MRI)の受診と診断は受けていなかったが、来院を許可された。
初来院当日、女性先生による問診が30分程あった。院長先生より脳性麻痺の指摘を受け、麻痺発生メカニズムの説明を受けた。足首以外に、手首にも症状が出ることをお教えいただき、左利きも助長するのか彼が不器用である理由に妙に納得したのを覚えている。その後 実際に施術を体験出来ることになるのだが、通常量の半数以下の鍼、通常時間の半分以下のマッサージ、それだけで充分に効果が表れた。踵を床に付け易くなったとのこと。その効果に感動したのか施術の痛みは失われ、本人が強く治療開始を希望した。短時間の施術であったが治ると感じ、治ると信じて通院を決めた様である。
車椅子を使っての移動生活が始まった。変わった歩き方を忘れさせる為、変わった歩き方をする時に使われる筋肉を休ませる為である。幸い自宅近くの学校に通っていたし、雨に降られることが少なく、登下校を車椅子と共にした。関係者や周囲の優しさに触れる機会を多く持てた。
大和鍼灸院近くにモールがあり、料理下手の私にとって そこでの美味しい昼食が、楽しみと治療の励みになっていたと思う。結果、学校を休んで通院治療を始めるが、その分 親が家庭学習に向き合い、子と親密な週末を過ごした。双子の弟は 兄の通院日のみ学童に通い、小さな社会に身を置く経験が出来た。
院長先生と女性の先生を始め、受付事務員さんも子育て経験のある方で、連れの幼児にも優しく正しく接してくださったのが心強かった。連れ子はキッズスペースのおもちゃと都度に入れ替わる絵本を大変気に入り、先生方からの声掛けも手伝い、とても満足気に数時間を過ごしていた。安心して昼寝までしていた。(私も…)
通院開始後一年経った今の様子である。集中治療開始直後から歩行時のバランスを取る為に両手を広げることが無くなった。ペンギンではなくなった。縄跳びが10回以上跳べるようになった。兄弟喧嘩が頻繁にあり、憤慨時に踵を床に着ける意識を忘れることがあるが、普段は普通の歩き方をしていると見受けられるようになった。疲れて変な歩き方で下校している生徒さんより美しい歩行をしている。普通の基準は難しいが、私にとって今の彼の歩行は普通であり、もう見ることがないと思っていたその姿は大変有難い光景として目に映っている。
普通の姿に戻してくださった先生方へ、ありがとうございました。
院長コメント S.S君 PVL(脳室周囲白質軟化症)グレード3
レポート11に続いてグレード3「独歩が出来る」グループで、8歳を過ぎてから治療を開始したお子さんです。筋の過緊張は男女差があり、女児より男児(男子)の方が過緊張が強くなる傾向があり、硬くなるスピードが速くなることが想定されるため、「3週間特別治療」を実施して頂きました。
さて、動画は全部で4本入っており、解説をしていきましょう。1本目は「初診日」に院内で撮影させて頂いたものになります。立位時はかかとが着きますが、歩きだした途端にかかとが浮くケースで、非常に多い症例です。両足ともかかとが浮き、足先が内転(内側に向く)しています。麻痺の状態は若干ですが左足より右足の方が強く出ており、足先の内転は左右ともほぼ同じくらいの大きさで内側を向いておりますが、かかとの浮きは右足の方が若干大きいことが分かります。2~4本目はちょうど1年後、今年の5月に院内で撮影したものです。2本目の動画は、「ゆっくり歩く~早めに歩く」歩行をしてもらいました。足先の内転は、両足ともほぼ消失しているのが分かります。また、かかとの浮きは完全に無くなっており、早歩きをしてもかなり滑らかな歩き方を獲得できています。3本目は「連続ジャンプ」です。かかとが浮く場合、「上手に走れない」だけではなく、「1回のジャンプ」もできないことが現状です。「ジャンプ」は、「弛緩と緊張」を連続することが特徴となります。よって、かかとが硬く「緩めることが出来ない」足は、否応なく「かかとが上がりっぱなし」のジャンプとなるため、無理にやろうとすると倒れてしまいます。動画では、麻痺を持たない普通のお子さんと同様に、綺麗に出来ています。そして4本目は、屈伸になりますが、「かかとが深く曲がっている」のが良く分かります。現在のかかとは、「麻痺が十分に取り除かれている」状態と言って良く、ゴールが近づいております。お子さんご本人も嬉しがっていますが、もう少しの辛抱です、一緒に頑張って行きましょう。