「低緊張」について
1.自閉症等の低緊張は、消失して行く
自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の小児、子供の中で低緊張と診断されるケースがよくあります。
低緊張が起こる代表的な疾患には、筋ジストロフィー、ダウン症、中枢神経系の障害では脳性麻痺、てんかん発作などがあり、遺伝性疾患、脳神経疾患ではその他にも多くの疾患で低緊張が現れます。また近年、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の子供達の中でも、筋力低下が指摘され、低緊張と診断されることがあります。
当院では自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、LDの子供達に起こる低緊張は回復していくものであるため、「低緊張」という位置付けはしておりません。難病レベルである筋ジストロフィー、ダウン症、脳性麻痺、てんかん発作などは回復自体が困難であり、原因となる遺伝子、脳障害が関与するこれらの疾患は予後が不良となるケースが多いことが現状です。それら疾患に対して自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、LDの子供達の低緊張は、遺伝子、脳障害が関与している訳ではなく、障害となる「自律神経損傷」が回復すれば、本来の能力が出現するため自然に筋力が高まり、低緊張は消失して行きます。では何故、低緊張に類似したことが自閉症等の子供達に起こってしまうのでしょう。
2.低緊張が起こる理由
神経伝達物質の中に「ドーパミン」という物質があります。このドーパミンは「やる気」や「興奮」などを担当する物質です。子供の成長では、寝返り、ハイハイ、そして1才を過ぎると一人歩きが出来るようになってきます。2才、3才ではかけっこ、次いでジャンプや集団での活動が待っています。お友達同士で追いかけっこ、自転車で思い切りペダルをこぐ、木登りや公園では至る所をよじ登る。子供達の興奮は毎日尽きることがありません。この様な生活の中で筋力は正しく成長していきます。「やる気」がでる時、「興奮」する時に脳内でドーパミンが産生放出され、さらなる興奮が重なって筋力は強まっていきます。
自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、LDの子供達はどの様な成長過程をたどっていくのでしょう。自閉症等の子供達の知的能力は正常に発達しています。1才、3才、5才、10才と年齢にあった理解や解釈が出来ております。通常「興奮する」までの流れは、「目」、「耳」から入ってきた情報を脳が受信し、即「ドーパミン」が産生放出されます。そして子供達は声を上げたり、笑ったり、駆け足をします。この間の時間は一瞬で行われます。ところが自閉症等の子供達は「自律神経損傷」が起こっています。脳内でドーパミンは産生放出されるものの、その後の「体内反応」に障害が起こるため、声に出せない、興奮しきれない、即行動できない現象が起こり、普段見かける子供とは違った反応をしてしまうのです。
「目」、「耳」から正しく情報が入り、正常な脳の働きであるドーパミンも産生放出されます。その後「自律神経損傷」によって、正常な「体内反応」ができません。一人遊びを好む、流ちょうな言葉のやり取りが苦手、集団生活でみんなと一緒に遊ぶ機会も上手に遊べません。毎日笑ったり、走ったり、木によじ登ったり、お友達と追いかけっこをしたことがありません。この様に、正しい筋肉の発達の機会を逃しているため、筋力が一時的に育っていないことが大きな理由です。自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、LDの子供達の筋力は、自閉症等の諸症状が消失すれば、楽しい、興奮する毎日を送ることができるようになるので、低緊張は自然に無くなっていくことでしょう。